全学体験ゼミナール「キノコに親しむ」2010

本日の山中湖:最低8℃、最高19℃、曇

10月になると、何かとキノコ関連のイベントが多い富士演習林です。
去年に引き続き、16-17日の二日間、東大教養学部1・2年生を対象とした
全学体験ゼミナール「キノコに親しむ」の現地講義が行われました。
今回参加した学生は14人。28の目がキノコを探索します。
高速道路の渋滞で若干スタートは遅れましたが、さっそくキノコ探しです。
初日は、富士演習林で最も一般的なカラマツ、アカマツ中心の林をめぐります。
袋を2つ持たせて、一方は食べられると判断したもの、
もう一方はそうでないものを入れてもらいます。
後に判定しますが、夕食の食材採取のノルマ(?)もかねたキノコ採取、
というわけです。
 
林内では、隊列をなして生えるホテイシメジや、大きなハナイグチなど、
様々なキノコを見ることができました。

ひととおり採取して戻ってくると、みなさん袋がパンパン。
しかも、「食べられる方」がはるかに多い…。
皆さん楽観的ですね。いや、食欲旺盛というべきか。
採取してきたキノコをシートに広げて、仕分け、観察です。
今日は種類も量も多く、観察のしがいがありました。
「食べられるほう」のなかでも、やはりテングタケのような毒キノコ、
古くなって食用に適さないキノコがありました。
一方で「食べられないほう」にもタマゴタケなどの食べられるキノコがありました。
夕食のための収穫物は厳密に仕分け、ハナイグチ、ヌメリイグチ、ナラタケ、
カヤタケ、タマゴタケ、ヤマイグチをキノコ汁用の食材としました。
その夜のキノコ汁は本当においしく、みなさんお代りをしておりました。

2日目は、朝に寒地性樹種試験地の方面へ、キノコ採取に出かけました。
モミ属やトウヒ属の樹種が植林され、菌根性キノコの発生が期待できる
ところですが、今回は目立った発生は見られませんでした。
その後は、キノコと関わりを持つご近所さん訪問です。
Tさんのお宅では、家の裏の林でのキノコ栽培を見せてもらいました。

Tさんは炭焼きの仕事をしていて、県有林で、県から炭焼き用の木を払い下げて
採ってきます。
炭焼きはナラしか使わないのですが、天然林には当然それ以外のも含まれます。
Tさんは、その有効利用としてヤマハンノキを利用したナメコ栽培を行っています。
みんなナメコの群生に目を見張り、「売らないんですか」との質問も。
Tさんは、近所や親類にあげて喜んでもらえればいいと考えていて、販売は
しないそうです。
次には、山によくキノコを採りに行くHさんを訪ねました。

Tさん宅ではさっそく、アシナガ(ナラタケのこと)の澄まし汁の歓待を
いただきました。キノコ味が出てすごくおいしい汁でした。
Hさんには、実際にご自身がよく行く山にも案内していただき、
どんなキノコを採っているのか、説明していただきました。

写真はその一つ、チャナメツムタケ。こちらでは「くりたけ」と呼ぶそうです。
Hさんがとるキノコの種類はわずか4,5種類。
これほどのベテランにしてこの種類は意外かもしれませんが、Hさんいわく
「知らないキノコは一切手を出さない」。
これこそがキノコ採りの極意なのかもしれません。
ほか、Hさんには薬草のことも教えてもらい、山と深くかかわる文化の
奥深さも垣間見せていただきました。